豊かな自然に恵まれた宮崎の森が育む「木材」は、私たちの暮らしと未来をより豊かにする、大切な資源です。
なぜ今、木材の利用がそんなに重要なのでしょうか?
それは、木材を使うことが、地球環境を守り、
地域を元気にする「森林資源の健全な循環」に繋がるからです。
木材と地域の環境保全
木材利用は地球温暖化を緩和します
木は、育つ過程で空気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、幹や枝に貯め込みます。木材として家や家具に使われた後も、そのCO2を長く貯蔵し続ける「炭素貯蔵庫」としての役割も果たします。さらに、コンクリートや鉄鋼と比べて、製造時のエネルギー消費が少ないのも木材の特長です。
森林がCO2を吸収するだけでなく、木材を積極的に利用することが、地球温暖化の進行を緩和する上で極めて重要です。

森林資源の「伐る・使う・植える・育てる」健全な循環

木材の利用は、単に木を伐ることではありません。
木材の利用は、森林の健全な姿を保ち、持続可能な社会を築くための「伐って、使って、植えて、育てる」という循環を生み出します。
伐採された木材は、家や家具はもちろん、近年では、スポーツ施設や町中の商業施設など、地域の人々が利用する建物での活用が多く見られるようになるなど、様々な形で私たちの暮らしに役立っています。


木を伐った後には、計画的に苗木を植え、育てることが大切です。
木を伐った後に苗木を植えることを再造林といい、宮崎県では、全国で初めて再造林に関する条例である再造林推進条例を令和6年7月に施行するなど、再造林を推進しています。
植えられた苗木は、下草刈りや間伐(木を間引くこと)といった手入れをすることで、元気に育ちます。特に、若くて活発に成長する木は、CO2をより多く吸収する能力があります。
この循環を繰り返すことで、私たちは常に質の良い木材を利用できるだけでなく、森林のCO2吸収能力を最大限に引き出し、土砂災害の防止や水源の涵養といった多面的な機能を維持・向上させることができます。


持続可能な社会への貢献
木材の利用を促進することは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献します。森林の健全な循環は、地球温暖化対策だけでなく、生物多様性の保全、地域の雇用創出、そして私たちの快適な生活空間の創造へと繋がります。
森林は、未来の世代からお預かりしている大切な財産です。このかけがえのない資源を賢く利用し、育んでいくことが、私たちの責任であり、持続可能な社会を築くための第一歩となります。
木材と健康
木材を活かした空間が、私たちの健康、快適さ、そして社会全体に多岐にわたる良い影響をもたらすことについて様々な研究がされています。
政府広報オンラインで紹介されているページとその参考資料から一部説明します。
国産木材を利用して、日本の森林を元気に保ちましょう
身の回りの木材が私たちにもたらすメリット
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201310/3.html#secondSection
心と身体の健康増進

木材の香りは、日々のストレスを和らげ、心身のリラックス効果を高めます。免疫力の向上や疲労感の軽減にも繋がり、質の良い睡眠をサポートすることで、健康的な毎日を支えます。
また、木材の持つ柔らかな感触は、心地よさをもたらし、特に床材としては、万が一の転倒時の衝撃を和らげる効果も期待できます。
快適な室内環境の実現
さらに、木材は室内の湿度を自然に調整し、常に快適な環境を保つ助けとなります。消臭・抗菌作用も持ち合わせているため、空間の空気をきれいに保ち、ダニの発生を抑える効果も確認されています。これにより、衛生的で心地よい室内環境が実現します。
集中力と生産性の向上
学習や仕事の場に木材を取り入れることは、集中力を高め、作業効率の向上に繋がります。特に、子どもたちの学習意欲向上にも良い影響を与えることが示されています。
宮崎県の木材の資源量
宮崎県のスギ素材生産量は全国一位
平成3年以降連続してスギ素材生産量が第1位となっています。
スギ以外を含めた素材生産量も第2位で、全国有数の木材供給基地として、県内外に木材を届けています。
スギ素材生産量(全国第1位 14.9%)

資料:農林水産省「令和6年木材統計」
※数値の合計は四捨五入のため必ずしも一致しない
素材生産量(全国第2位 9.5%)

資料:農林水産省「令和6年木材統計」
※数値の合計は四捨五入のため必ずしも一致しない
宮崎県は森林資源が豊富
宮崎県は、県土の約76%が豊かな森林に覆われていて、森林面積の約56%がスギやヒノキなどの人工林となっています。この広大な森林から育まれる木々は、私たちの生活に欠かせない、かけがえのない資源となっています。
森林の面積(ha)

※数値の合計は四捨五入のため必ずしも一致しない
森林の蓄積(千m3)

※数値の合計は四捨五入のため必ずしも一致しない
みやざきスギの特性
みやざきスギには天然成分「スギ精油」がたくさん入っている!
木材に含まれる精油などの油分は、木材の耐朽性(腐れやシロアリに対する強さ)や香りに大きな影響があります。オビスギは、油が多く腐りにくいとして古くから船の材料として使われていました。
地域毎にスギの油の量を比べた結果、飫肥地域のスギは本当に油分が多く、有効成分(腐れや害虫に強い成分)も多いことが確認されています。
飫肥地域のスギ群はオビスギとして知られており、今では県内全域に植栽されています。このことから、宮崎県産スギ全般に精油分が多く含まれることが期待されます。
試験方法



宮崎のスギは強い
みやざきスギは比較的柔らかいことから、「弱い木材?」という評価が一般に定着しているようです。
しかし、実験結果からスギの実大材は、むしろ「強い」材料であることが分かりました。


表面割れがあっても強い!
「表面割れ」とは、木材が乾燥する過程で発生する木材表面の割れのことです。

心持ち材の表面割れの長さと強度の関係実験
心持ちの表面割れ材は、表面割れのない材に比べて、曲げ強さも曲げヤング係数(曲がりにくさの度合い)も表面割れ率が高いほど高くなっています。
つまり、表面割れは曲げの強さに影響しないことが分かります。


宮崎県産材による建築事例
小林市庁舎(小林市)


構造 | 本館:SRC造 4階 東館:W造 3階 |
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特徴 | 本館:内装木質化 東館:在来工法による木造3階建て |
主要材料 | 県産杉・桧製材525.92㎥ 県産杉・桧集成材158.76㎥ |
竣工 | 平成29年6月 |
宮崎県防災庁舎(宮崎市)


構造 | 鉄筋コンクリート造(地下) 鉄骨造(1~10階)+CLT耐力壁(4~9階) |
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構造形式 | 免震構造(柱頭免震) |
CLT | 樹種:県産杉 構成:7層7プライ 強度:Mx60A 寸法:幅1800mm、高さ2600mm、厚210mm CLT耐力壁は地震による水平力の約30%を負担 |
竣工 | 令和2年7月 |
宮崎県体育館(延岡市)


構造 | 鉄筋コンクリート造(低層部)2階 鉄骨・木造(屋根部) |
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特徴 | 宮崎県で最大規模の体育施設 メインアリーナとサブアリーナ2つの大空間を持つ建物で、震災や洪水などの災害時には地域の防災拠点としての機能もある 屋根の部分は鉄骨と木材(宮崎県産杉)のハイブリッド構造で、最大約70mスパン |
竣工 | メインアリーナ:令和8年3月予定 サブアリーナ:令和5年8月 |
宮崎県木材利用技術センターでは、県内の木造化・木質化建築物の事例集を掲載した「公共建築物の木造化・木質化推進のための技術支援マニュアル」を作成しています。
■ 宮崎県木材利用技術センターホームページ
https://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/kankyo/mokuzai/wurc/kankoubutu/gizyutusiennmanyuaru/gizyutusiennmanyuaru.html
木育かわら版
VOL 27
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VOL 26
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VOL 25
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VOL 24
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その他パンフレット
木づかいコンピレーション
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